ガーベラのつぼみ

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K二丁目

本の感想と、日常と。

AlphaGoの影にヒカルの碁sai を感じる

 普段家でテレビを観なくなったのは、大学時代に一人暮らしを始めてからだった。大学生当時はアルバイトや遊び、勉強によりテレビを観ている時間がなかった。その習慣が今でも残っており、仕事から誰もいない自宅に帰宅しても、よくありがちなとりあえずテレビの電源をつける、ということもない。静かな部屋で一人、スマートフォンやパソコンでネットを見ているだけだ。そうすると必然的に、ニュースもそういったものから入手するようになっていった。今や便利なニュースアプリを使い、なんとなく記事を眺める。新聞の基本的な使い方として、適当に見出しを読み、興味のあるものは中身の記事を読むと効率がいい、と小学生時代に先生から言われた記憶があるが、今では目についた記事ほとんどを流し読みしている。なぜなら他に、することがないからだ。

 特に趣味のない者にとっては、こうしたニュースや、大手掲示板の2chなど、時間つぶしには最適だった。今日も明日からの仕事にため息をつきながら、いつも通りにニュースに目を通す。「ネット碁に現れた謎の囲碁棋士MasterはGoogleAIのAlphaGo」というような見出しに興味を惹かれた。

 AIとは人工知能のことであるが、日本マイクロソフトが開発した会話ボット「りんな」や、Google社の検索エンジン、自動運転など挙げれば切りがないほど様々なシーンで活用され、目まぐるしい開発・研究が進んでいる。この記事に出てきたAlphaGoは、Googleの傘下であるGoogleDeepMindが開発するAIであるが、膨大なデータベースを元に最適解をはじき出すようなアルゴリズムとは異なり、まさに自分で学習して知能を高めていくシステムが組まれている。ひと昔前では人間が圧倒していたチェスや将棋は膨大なパターンながらも、あらかじめ定義されたシステムによりプロに勝ちうるAIもあった。しかし、そういったボードゲームの中でも、その局面の数が圧倒的に多い囲碁では、まだ人間に追いつくのは時間がかかるだろうと考えられていた。ところが2016年3月、囲碁のプロの中でもトップといえる棋士に、このAlphaGoが勝利した。囲碁界では衝撃的な結果であるが、更にその4か月後の7月には世界ランキングでTOPに躍り出るなど、ますますの進化が遂げられている。

 2016年末から、このAlphaGoがさらなる進化を経て、「Master」という名でネット碁に現れた。ネット碁はプロの棋士でも今や日常的に対局をする場として普及しており、このMasterがことごとく勝利をおさめ、2017年始には61戦60勝という驚異の結果に終わった。このMasterは現れた際にはAlphaGoという正体を明かさず、その見事な打ち筋、圧倒的強さにより、謎の棋士としてすぐさま注目を集めた。その様相に、日本の漫画・アニメで囲碁ブームを起こした「ヒカルの碁」に登場するsaiの影を重ねた者は多い。ニュース記事や大手掲示板でも、この話題に対してそうしたコメントが少なくない。

 私も当時は小学生で、ヒカルの碁には漫画・アニメ共に漏れなく触れている。魅力的な話の展開にのめり込み、囲碁のゲームを買うくらいには影響されたものだった。「あの頃は何にでも興味を持っていたな」このニュースから幼い時代の頃を振り返るとは思ってもみなかったが、懐かしい気持ちを感じたのは少し心地がいい。明日に備え、この日は早めに床に就いた。