ガーベラのつぼみ

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K二丁目

本の感想と、日常と。

医者になりたい人がなる前に読む本

 医者というのは昔から、そこに至るまでの困難な関門や高い収入、また生命を扱う崇高的でやりがいのある仕事から、社会的地位の高い職業であるということは一般認識として間違っていないだろう。私自身もそう思っているし、実際に風邪やインフルエンザで普段お世話になる医者の方々はもちろん、自分が難病にかかった時のことを考えると、医学会に関係のある新薬等の研究者の方々に感謝しないわけはない。まだ医者を志す身の医学部生にさえ、是非頑張ってほしいと応援したくなる。一方で、その職業の責任の重さと大変な労働はこれまた一般的に高いものを要求されると思う。思うというのは、もちろん、私は医学界や医療の現場というのが身近にあるわけではないからだ。ドラマや漫画で、特に漫画では「ブラックジャックによろしく」で医療現場の厳しさを教えてもらったが、逆に言えば、それくらいしか知らない。

 それもなんだか少し寂しい気がしたので、改めて医者がどういう職業なのかを知っておきたく、一冊の本を読んでみた。すばり、「医者とはどういう職業か」という本が、割と最近、2016年9月に出版されていた。

 著者は里見清一(著者名)という日本の内科医だ。2009年から今に至るまで8冊の本を出版している。20代前半くらいになるともう知らないだろうか、あのTVドラマ「白い巨塔」のアドバイザーを務めていたのである。

 本書の内容はというと、かなり率直に、表現としてはシニカルな文体で医者や医学界の、一般に明るみに出ない内情が書かれている。大学入試試験の見直しや、人工知能など、最近の動向にも触れていながら、十数年も前の自身の経験に基づいた医療現場の姿を教えてくれる。もちろんそれについては、今では様相が異なることは前置きがある。

 前半は受験や医学部での勉強が医者の仕事に役に立つのかであったり、医者として必要な能力を謳っている。また、講義に臨む姿勢に、多少憤慨されていた。もちろん、医学部生に限った話ではないと筆者も認識してはいるらしく、漏れなく学生時代は私も似たようなものだったので、読んでいて耳が痛いというか、目が痛いというか。一方で、筆者曰く、看護学生は「天使」なのだそうで、我々一般人が思い浮かべるコスプレ的イメージからではなく、仕事に対する純粋な姿勢が、医学部生と比較してより強く感じられるのだそうだ。看護学生を天使と呼ぶのは、本書中何度も散見されたのだから、真にそう思われているのだろう。私は看護師の友人が数人いるが、彼女らにこの話をすると、笑われるような気がしてならない。

本書の最後では医者が本来どうあるべきなのかを語っており、加えて、これからは医者に求められる能力が変わる、もしくは医者に代わる者がでてくるかもしれない。筆者はこう注意されている。

もし読者がそういう中学生もしくは高校生で(私の毒のある文章は18禁かもしれないが)、医学部を目指すのであれば、君たちがめでたく医者になる頃には、伝統的な「お医者さん」もしくは「医師」のイメージは跡形もなく消え去っている可能性を想定しておくべきだろう

 筆者本人が認めるほど、都度、毒のある表現が入るが、これはこれで面白味のあるものと感じられる。ただ合理的な面も合わせてドライな印象も感じるが、一方で医者としての熱い思いや、趣味の落語も交えた意見には温かい人間味も感じられる。私が入院することになれば、里見先生のような考え方の医師に罹ってみたいと思うのは、私の見識が浅すぎるからなのだろうか。