ガーベラのつぼみ

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K二丁目

本の感想と、日常と。

日本の自動車産業が知りたければ

 東京に住んでいたころは、学生だったこともあり交通手段はほぼ電車やバスといった公共交通機関を使っていた。学校に通うにせよ、どこかに遊びに行くにせよ、だ。ある程度の遠出するときは車を借りたりもしたが、大体は電車で事足りていた。

 それが仕事で東京を離れることになり、車の利便性に大きく頼ることとなる。通勤はもちろん車、遊びに行くときも、車なしではかなり制限がかかる。このように、車は一旦としから離れるとなくてはならない存在だが、たとえ使用しなくとも、日本にとって重要な産業であることは、誰もが認識していることと思う。しかしながら、自動車産業が今どういう状況にあるのか、これからどうなっていくのか、ニュースなどで「点」でとらえる程度だという人は、少なくないのではないだろうか。私もその一人で、一度関連書籍を読んでみることにした。

 日本の自動車メーカー

 各社それぞれの置かれている現状、戦略を知るのに、「成長力を採点!2020年の「勝ち組」自動車メーカー」という本は非常に詳細に書かれていて面白い。著者は中西孝樹というアナリストの方で、詳細なデータ、情報による分析が細かく記載されている。それゆえ、少し難しいと感じる箇所はあり、本当に理解するのには何度か読み返す必要がありそうだが、概要を理解するのには問題はないと感じた。財務的なところは、のちに勉強してもう一度読むとわかるであろうし、本書は将来性を語っているため、数年後にもう一度読むことで、更に理解が深まるだろうと思う。その時には私も、少しは読書リテラシーが上がっているだろうから、IT化によるこれからの自動車産業の進化をこの本で得た知識をもとに考えながら、数年後の再読を楽しみにすることにした。

 具体的な内容は、トヨタ、日産、ホンダ、マツダダイハツ、スバル、スズキ、三菱の8社の国内自動車メーカーを、成長力や安定性、収益性や技術力といった観点で評価を行い、総合点による順位付けを行っている。そしてそれだけではなく、深層の競争力として、表面化しない点についても評価をしている点がこの本の醍醐味だろう。もちろん自動車産業は技術開発、商品開発から販売、アフターサービスまでのリードタイムが10年以上の足の長い産業であることを踏まえたうえで、困難ながらも著者の予測を打ち立てている。

 一見各社の順位づけというと、「勝手」と感じてしまうこともあるが、著者の自動車に対する情熱から、決して曲がった視点からの分析ではないことが本書を読めば誰にでも感じ取れることだろう。

 自動車産業のこれまでとこれからについて

 順番が逆になったが、本書の序盤はこの説明から始まっている。2012年ごろの「超円高」「法人税率の高さ」「労働、環境規制」による苦しい時代からは完全に脱していわけではないと著者は説く。収益性の大幅な改善はアベノミクスによる円高是正などのマクロ要因の貢献が大きい印象と述べる。これからについては、次のステージへ突入している。自動車メーカーは完成車メーカーと言われ、約3万点に及ぶ部品を扱う自動車では、当然サプライヤーが重要となる。大きく分けて、3次までのサプライヤーを垂直統合した開発モデルが日本車メーカーの強みだった。しかし、これからはトヨタのTNGAのような新開発モデルが、国際競争に勝つために必要な戦略である。このような今までの弱点と、これからの動きの理屈を、欧州自動車産業との比較を提示しながら分析結果を教えてくれるのが本書だ。

 本書を読んでどうなるかというと

 自動車メーカーにとって注意すべきはもはや他国メーカーだけではなく、googleなどのIT企業が自動運転や車載システムに大きく関与するどころか、産業革命を起こし得ることは容易に想像がつく。これらの先進的な技術による発明、開発といったニュースが、自動車産業関係なく目や耳に入ってくるだろう。そんなとき、本書による分析予測を知っているか否かで、それらの楽しみがよりわかるようになることが期待できる気がする。