ガーベラのつぼみ

K二丁目

本の感想と、日常と。

橘玲さんの『言ってはいけない残酷すぎる真実』を読んで

 

タイトルには「残酷」とあるが、真実を希望にするか絶望にするかは人次第だと僕は思う。本書は、「で、自分はどうするのか?」ということを考えられる人にとっては、巷に溢れる自己啓発本よりよっぽど好影響を与えてくれる本となるのではないだろうか。努力をすることに不安や行き詰まりを感じているときに、冷静になって読みたい本だ。

 

筆者は冒頭で、"これは不愉快な本だ。だから、気分よく一日を終わりたいひとは読むのをやめたほうがいい。"と添えたうえで、進化論を基にした言ってはいけない真実が世の中をよくするために必要だと主張している。

 

 

 

 

本書は三章ある。

1.努力は遺伝に勝てないのか

2.あまりに残酷な美貌社会

3.子育てや教育は子供の成長に関係ない

 

遺伝に関して、身長や体重といった体形、陽気か陰鬱かといった性格、運動の得意不得意やセンスの有る無しといった能力、それから依存症や精神病といった類のものも親から子へ遺伝するという研究結果があるという。また極めて社会的に重要な犯罪についても、その傾向は存在すると主張する。

数字としては、身長の遺伝率は66%、体重の遺伝率は74%、統合失調症や躁鬱病の遺伝率は80%。

一卵性双生児と二卵性双生児を対象とした調査により、論理的推論能力の遺伝率は68%、IQの遺伝率は77%ということもわかっているという。また、よく知能が高い人種としてユダヤ人があげられるが、確かに平均が100に対してユダヤ人のIQの平均は112~115と1標準偏差ちかく高いのだという。これは、過去のヨーロッパにおけるユダヤ人差別が影響し、金貸しで生計を立てざるを得なかったことによる進化なのである。

 

このあたりから思うのは、これらが事実だとして、だからどうということはない、ということだ。論理的思考能力による技術開発競争や、運動能力を競うオリンピック競技にしたって、遺伝による敗北を受け入れなければならないのはいわゆるトップ層である。グローバル社会において世界と戦わなければいけないのは事実であるが、全員がユダヤ人と競争しているわけでもなければ、強敵はユダヤ人だけということでもない。

また、欧州の人たちに比べて、日本人の平均身長は低いが、スポーツ以外でそれによる敗北を受けているのは果たしてどれほどの人がいるだろうか。(女性の獲得という競争において欠点はあるかもしれないが、日本人であるがゆえに得られる利点と相殺できるだろう)

 

面白かったお話しをもう一つ。"幸福のホルモン"と呼ばれるセロトニンは、その濃度が高いと楽天的に、低いと神経質になるのだが、このセロトニンを運搬するトランスポーター遺伝子には、伝達能力が高いL型とS型があり、LL型、SL型、SS型の3つに分けられる。日本人の70%がSS型で、LL型は2%しかいないのだという。

 

こうして考えると、性格を含む遺伝というのは確かに存在し、努力でどうにもできないことがあるのは事実かもしれないが、そう思ってしまってはそこで試合終了だ。血液型と性格の科学的根拠は見つかっていないようだが、日本人は体現しているように思える。事実よりも、自分が何を信じどう行動するかが重要なのである。

 

こう考えるのは、あまりに楽観的だろうか。

 

最後に、教育についての話も興味深かった。別々に育てられた一卵性双生児の内、片方はプロのピアニストになり、片方は音符すら読めなかった。プロのピアニストに育ったのは、音楽教師を親にもつ子どもではなく、楽譜の読めない親を持つほうだったのだ。

それはなぜだろうか。